使用者団体にも要請書
◆ 厚生労働省は、東日本大震災を契機とした解雇、雇止め、派遣切りを食い止めるため、監督指導を強める方針である。震災による直接被害に加え、原材料の流通障害、電力供給の制約などにより、今後相当な期間にわたって経済、雇用への影響が懸念されることから、労働基準法違反はもとより、労働契約法や裁判例を踏まえた行政指導を展開する意向とした。整理解雇に当って4事項を考慮したか、派遣切りの回避努力を行ったかなどを事業所ごとに確認し、雇用維持を求める。大震災による広範囲で甚大な被害による雇用情勢の悪化が懸念されている。原材料、製品の流通障害や電力供給の制約も加わり、直接被害のない地域においても今後相当な期間にわたり経済活動と雇用への影響が継続するとみられている。
厚労省はこのため、解雇、雇止め、派遣切りの防止に向け、都道府県労働局や事業者団体に次々と通知を出し、雇用維持に全力を挙げるよう要請した。都道府県労働局、労働基準監督署においては、集団指導、緊急相談窓口、各種届出受理時などの機会を利用して、労基法の遵守はもとより、労働契約法、裁判例などの周知を図り、適切な労務管理の実施を求める考えだ。大量の整理解雇、雇止めについては、労基署と公共職業安定所の双方で情報交換し、迅速な実態把握に努める。
整理解雇事案を把握した場合は、「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定基準の合理性」「解雇手続の妥当性」の4事項を考慮すべきことを確認し、解雇以外の方法の検討を求める。有期契約労働者の解雇は、正社員の解雇より有効性が厳しく判断されることを説明するよう支持した。
派遣労働に関しては、派遣先が派遣契約を解除してきた場合においても、派遣元との関係では、直ちに適正な解雇理由とはならない為、別の派遣先の確保に努めるよう指導するとしている。それでも派遣先が見つからないときは、別の地域への配置転換を行って就業場所を確保するよう働きかける。
日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に対しては、労働者の雇用維持、被災者の雇入れ、有期契約労働者・パートタイム労働者・派遣労働者の雇用安定・保護への最大限の配慮について、細川厚生労働大臣名で要請書を交付している。