【雇調金の不正受給が拡大】・・・厚生労働省 

実地調査徹底を指示

    厚生労働省は、雇用調整助成金の不正受給が依然として改善されないため、

7月から防止対策を強化した。事業主が自ら実施する事業所内訓練の日数が多い場合などに、「必ず実地調査を行う」としている。

雇用調整助成金の不正受給防止対策は、今年4月から「第1弾」を実行に移した。休業などの実施事業所に対する都道府県労働局・公共職業安定所による実地調査回数を増加させたほか、休業した労働者などの一部に対して電話ヒアリングによる確認を始めた。

また教育訓練においては、実際には通常の生産活動をしているにもかかわらず、教育訓練として不正申請するケースがみられたため、教育訓練後の支給申請時における個々の労働者ごとの実施証明書の提出義務付けなどを始めた。

 

7月からの「第2弾」では、

    事業主が自ら実施する事業所内訓練の日数が多い事業所

    ある程度業務量があると推察されるにもかかわらず休業日数が多い事業所

    休業を実施する一方で、合理的な理由なく雇用労働者が増加している事業所

に対して「必ず実地調査を行う」方針とした。 

 

都道府県労働局による立ち入り検査が効果的に実施できるよう担当者への研修も予定。効率的な立ち入り検査のノウハウを厚生労働省本省において収集・分析しその成果を提供する。

厚生労働省では平成21年度、架空の休業、教育訓練を実施したとして虚偽申請した91事業所、受給額にして7355万円を不正として支給済み助成金の返還と不正後3年間の助成金不支給処分を課している。また、悪質なケースでは刑事告発している。 

【改正ニュース】・・・育児・介護休業法の改正(630日施行)

 

<育児・介護休業法の改正のポイント>

1 )①子育て中の短時間勤務制度及び②所定外労働(残業)の免除の義務化

3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度・所定外労働(残業)免除制度などから1つ選択して制度を設けることが事業主の義務。

 

    3歳までの子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(16時間)を設けることが事業主の義務になりました。

    3歳までの子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働(残業)が免除されます。 

※短時間勤務制度については、少なくとも「16時間」の短時間勤務制度を設けることを義務としますが、その他にいくつかの短時間勤務のコースを設けることも可能です。

※雇用期間が1年未満の労働者等一定の労働者のうち労使協定により対象外とされた労働者は適用除外。 

 

2 )子の看護休暇制度の拡充

病気・けがをした小学校就学前の子の看護のための休暇を労働者1人あたり年5日取得可能。

 

休暇の取得可能日数が、小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日になりました。

 

3 )父親の育児休業の取得促進

①パパ・ママ育休プラス(父母ともに育児休業取得する場合の休業可能期間の延長)

父も母も、子が1歳に達するまでの1年間育児休業取得可能

 

母(父)だけでなく父(母)も育児休業を取得する場合、休業可能期間が12ヵ月に達するまで(2ヵ月分は父(母)のプラス分)に延長されました。

※父の場合、育児休業期間の上限は1年間。母の場合、産後休業期間と育児休業期間を合わせて1年間。 

 

②出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進

育児休業を取得した場合、配偶者の死亡等の特別な事情がない限り、再度の取得は不可能。

 

配偶者の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度の取得が可能となりました。 

 

    労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止

労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合等の労働者からの育児休業申出を拒める制度を廃止し、専業主婦(夫)家庭の夫(妻)を含め、すべての労働者が育児休業を取得できるようになりました。 

 

4 )介護休暇の新設

労働者が申し出ることにより、要介護状態の対象家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日、介護休暇を取得できるようになりました。

※雇用期間が6ヵ月未満の労働者等一定の労働者のうち労使協定で休暇を取得できないものとされた労働者は適用除外。

注)常時100人以下の労働者を雇用する企業については、(1)①の短時間勤務制度の義務化、(1)②の所定外労働(残業)の免除の制度化及び(4)の介護休暇の制度化については、「公布日から3年以内の政令で定める日」です。

<労 務 相 談 室> 

【年休賃金は派遣元負担か】

<質 問 > 派遣先が計画的付与を予定

◆  6ヶ月の派遣契約を結ぶ方向で交渉しています。派遣先(予定)では、「ゴールデンウイークに合わせ、計画年休を実施するので、そのつもりでいてほしい」といいます。計画年休で休んでいる間、賃金は派遣先・派遣元のどちらが負担するのでしょうか。今回の派遣では、新しく社員を採用するので、年休はその時点で発生していません。

 

<回 答>  契約で「就労日」から除く

◆  派遣契約を結ぶ際、法定の契約事項には「派遣の期間および派遣就労をする日」が含まれています。「就労をする日については、具体的な曜日または日を指定する」必要があります。

ですから、派遣先とよく打ち合わせのうえ、ゴールデンウイーク期間中については、カレンダー上の休日・祝日(または相手先の公休日)のほか、計画年休日もあらかじめ「派遣就労をする日」から除いておく必要があります。

そうすれば、派遣先は休日・計画年休日に派遣労働者を受け入れなくても、派遣料金の支払義務が発生しません。

次に、貴社(派遣元)と派遣労働者の間ですが、派遣法第34条に基づき、就業条件の明示を行います。明示事項の中には、「派遣契約の法定事項」が規定されているので、当然、「派遣の期間および派遣就業をする日」も含まれます。派遣契約の中で、就労日から休日・計画年休日を除いていれば、その日は元々、派遣就労しない日として明示されていることになります。

明示の方法は、書面のほかファクシミリ・電子メール(労働者が希望する場合)も可能とされています。

登録型派遣のときは、「労基法第15条に基づく労働条件の通知と就業条件の明示が同時に行われます」。

労働条件通知事項の中には「休日・休暇」が含まれ、書面による明示が必要とされています。

派遣先の計画年休日が不就労日として明示されていれば、派遣元もその日については賃金支払義務を負いません。元々、労働日でないので、休業手当も請求の余地なしです。

<平成22年4月から国民健康保険料が軽減>

 

  厚生労働省は、倒産などで職を失った者に対する国民健康保険料の軽減措置を4月からスタートさせた。失業時から翌年度末までの間、前年所得の給与所得を100分の30とみなして保険料を算定する。

対象は、雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)と特定理由離職者(雇止めなどによる離職)。軽減措置開始の前1年以内(平成21331日以降)の離職者も含める。

ハローワークにおける雇用保険受給説明会などにおいて、対象となり得る者にリーフレットを配布し、市町村への申請を勧奨する。

 

<対象者は?>

離職の翌日から翌年度末までの期間において、

(1) 雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)

(2) 雇用保険の特定理由離職者(雇い止めなどによる離職)

として失業等給付を受ける方です。 

 

<軽減額は?>

国民健康保険料は、前年の所得などにより算定されます。軽減は、前年の給与所得をその100分の30とみなして行います。 

 

<軽減期間は?>

離職の翌日から翌年度末までの期間です。

※雇用保険の失業等給付を受ける期間とは異なります。

※会社の健康保険に加入するなど国民健康保険を脱退すると終了します。

 

<制度が始まる前の失業は対象外ですか?>

制度が始まる前1年以内(平成21331日以降)に離職された方は、平成22年度に限り国民健康保険料が軽減されます。

※ただし、平成21年度の保険料は対象となりません。 

労 務 相 談 室

 

【時間年休付与の協定締結か】

<質 問 > 半日単位制度は導入済み

    当社では半日単位年休制を導入する際、労働協約で要件等を明確化しました。労基法の改正により、平成2241日からは時間単位年休制度の導入が可能となります。当社の場合、既存の労働協約を改定すれば足りるのでしょうか。

 

<回 答>  既存の規定残し項目追加

    時間単位年休制度を導入するときは、過半数労組(ないときは過半数代表者)と次の事項に関する協定を結びます。

    対象労働者の範囲

    時間単位年休を与えることのできる日数

    有給休暇1日の時間数(1時間未満の端数切り上げ)

    1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

半日単位年休制の場合、使用できる日数の法的上限はなく、労使が事由に設定できます。しかし、時間単位年休制では、5日が限度と定められています(前期②)。半日単位年休制の半日の境目に関しても、法的な制限は設けられていません。

例えば、午前3時間半就労、1時間休憩、午後4時間就労という会社では、休憩時間の開始・終了を半日の境目としているのが一般的です。

しかし、時間単位年休制の場合、1時間未満の端数が出る形で年休を与えることはできません。このため、所定労働時間7時間半の会社では、労使協定で有給休暇1日の時間数を8時間と定めることになります(前期③)。8時間の時間単位年休を取得して、はじめて1日分の年休を消化したものとみなします。

時間単位年休制は、既存の半日単位年休制とは要件が異なります。年休の取得単位が短くなっただけではありません。

ですから、行政解釈でも、「年休の半日単位付与については、本来の休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて問題がないものとして取扱い、この取扱いに変更はない」と述べています。

貴社で過半数労組と労働協約を結べば、時間単位年休の導入が可能ですが、既存協約を改定する場合も法定事項をカバーする必要があります。半日単位年休制の利用希望者もいるはずですから、既存の規定はそのまま残すべきでしょう。

【体験雇用へ1人月8万円】・・・厚生労働省 

22年度限定で奨励金

   厚生労働省は、平成22年度に限った時限措置として、企業に「新卒者体験雇用奨励金」を支給する。一昨年秋ごろからの金融危機の影響を受け、未就職のまま卒業する高校生・大学生が大幅に増加すると見られているためで、1ヵ月の体験雇用の機会を提供した企業に、1人当たり月額8万円を助成する。

ハローワークにおいて、新卒者の就職支援を行うジョブサポーターも今年度より310人多い928人配置する意向だ。

今春の新規学卒者の就職環境は「非常に厳しい状況」にある。高卒予定者の昨年11月末現在の就職内定率は、前年の78.0%から68.1%へ10ポイント低下した。大卒予定者の昨年121日現在の就職内定率も、同じく80.5%から73.1%に大幅下落している。

厚生労働省では、このまま推移すると、最終的に未就職のまま卒業する学生が拡大する懸念があるとして、新卒者支援対策に力を入れる方針である。

22年度限りの時限措置として設置するのが「新卒者体験雇用奨励金」である。 求人数が減少したことで、希望に沿った職種に就くのが困難となっていることから、1ヵ月間の体験雇用を通じて、職種の選択肢を広げる狙い。求職者と企業の相互理解を進めて、体験雇用後の正規雇用につなげたい考えである。

体験雇用を提供した企業には奨励金を支給する。ハローワークに奨励金の対象となる求人を提出し、今年1月以降の職業紹介を通じて体験雇用(有期雇用)を受け入れた場合、1人当たり月額8万円(1ヵ月間に限定)を助成する。

未内定の高校生、大学生で、体験雇用が早期就職に有効と判断される者を対象とし、卒業後に体験雇用開始日を設定するのが条件。期間の定めのない正規雇用へ移行するときは、改めて雇用契約書を締結するとした。

高卒・大卒就職ジョブサポーターは、22年度において、今年度より310人多い928人を全国配置し、高校・大学との緊密な連携の下で、就職面接会の開催、就職支援セミナーの開催、希望者への個別支援などを進めていく。  

【代替休暇実施は6%】・・・愛知県経営協会

 今後の労使協議待ちに

    愛知県経営者協会は、平成2241日に施行される改正労働基準法への対応状況をまとめた。労使協定により1ヵ月60時間超の割増賃金の引上げ分に代えて有給休暇を付与するなど、何らかの対応を決定している企業は昨年9月〜10月時点で2割に過ぎず、残りの8割は未定の状態にあることが分かった。同経協は、労使間協議がまだ行われていない段階か、協議中の可能性が高いとみている。

改正労働基準法では、1ヵ月60時間を超える時間外労働の法定割増率が50%以上に義務化されるほか、1ヵ月45時間を超える時間外労働の法定割増率が25%超に努力義務化される。中小企業に限っては3年経過後に再検討して適用を決める猶予措置が取られている。

同調査は改正労基法への対応状況を把握する目的で昨年910月、愛知経協の会員企業976社に対して実施。235社(24.1%)の回答を集計した。従業員300人以上規模の企業が過半数を占めている。

改正労基法では、事業場で労使協定を締結すれば1ヵ月60時間超の時間外労働を行った労働者に対して、引上げ分(50%−25%=25%)の割増賃金の支払いに代えて有給休暇を付与できる。これについて対応状況を聞いたところ、引上げ分の支払いに代えて有給休暇付与を決定している企業は13社(5.6%)だけだった。一方、同有給休暇制度を実施しないと回答した企業は33社(14.1%)で、決めていない企業が188社(80.3%)と圧倒的に多かった。

努力義務である45時間超の時間外労働の割増賃金率設定については、実施を決定している企業は3社で、実施しない企業は32社、未定が有給休暇付与と同様136社と最も割合が高かった。ただし、すでに時間外労働の割増率が25%を超えている企業も63社と少なくない。内訳をみると、3034%が50社、2629%が5社、40%以上が3社、3539%が2社となっている。

年次有給休暇の時間単位付与をみると、実施を決定している企業が13社、実施しない企業が40社、未定が181社となった。

同経協は、調査時点で労使間協議がまだ行われていないか、もしくは協議中の状態にあるとみている。 

【企業行動に関する調査】・・・内閣府 

8割超える残業削減

    利益確保策の一環に賃金調整を含む雇用調整の実施率が46%――内閣府の企業行動に関する調査が明らかにしたもの。最も多いのが残業削減の85%で、加工型製造業では9割を超える。正社員の解雇が4.7%にとどまっているのに対し、正社員以外の解雇は6倍強の29.7%にも上っている。急激な景気減速の下で進行する雇用調整の現状をみると――。

厳しい状況下で利益確保を図る取組みとして実施されているのは、生産工程・作業工程等の効率化が最も多く(64.7%)、次いで原材料・燃料・商品等の調達先の見直し(60.5%)。賃金調整を含む雇用調整は45.9%だった。ただし製造業の雇用調整は56.1%にアップする(下表)。

製造業を業態別にみると、加工型製造業(機械、電気機器など)では各取組み率が全産業より増加し、幅広い対応を講じていることが分かる。生産工程等の効率化は83.2%に達し、雇用調整は67.8%になる。素材型製造業(繊維製品、パルプ・紙、化学、鉄鋼など)の雇用調整も全産業を9ポイント上回る。 

  利益確保の取組み(複数回答)                    単位%

全産業

製造業

非製造業

素材型

加工型

その他

販売価格の引上げ

48.1

61.7

66.2

51.0

71.5

32.4

雇用調整

45.9

56.1

54.9

67.8

42.4

34.2

設備投資の抑制

58.6

68.5

69.0

76.9

57.6

47.2

省資源・省エネルギー化

44.5

55.1

54.2

57.7

52.7

32.2

生産・作業工程の効率化

67.4

81.4

78.2

83.2

81.8

51.2

原材料等調達先見直し

60.5

69.1

69.0

72.6

64.8

50.6

内部留保の取崩し

16.1

18.3

13.4

22.1

17.6

13.6

その他

12.3

10.5

12.0

10.6

9.1

14.3

特段の取組みなし

5.4

1.7

1.4

0.5

3.6

9.6

記入社数

962

515

142

208

165

447

 【平成21年標準生計費】・・・人事院 

4人世帯は微減の23万円

    国家公務員の給与勧告の基礎資料となる人事院の標準生計費によると、平成214月の4人世帯で前年比4000円弱減の23.0万円となった。2人、3人世帯とも減少したが、とりわけ2人世帯は約2.3万円も減り、この10年間で最も低い15.9万円に落ち込んだ。逆に、1人世帯は算出方法の変更から26%強アップして12.6万円に跳ね上がっている。

標準生計費は25人世帯について、総務省の家計調査(毎年4月)をもとに費目別平均支出金額に生計費換算乗数を掛けて算出しており、民間企業でも賃金政策の指標の一つとして広く活用されている。

平成214月の標準生計費は、標準的な家族構成の4人世帯(夫36歳相当、妻、子2人、夫のみ就業)で23450円だった。前年と比べると3830円、1.6%の減少だ。2人(夫28歳相当と妻)、3人(夫32歳相当と妻、子1人)世帯とも前年より減少した。2人世帯は2年連続して全費目でマイナスとなり、前年比12.6%減の159060円で、この10年間で最も低い水準である。

1人世帯は、従来の1821歳の勤労単身世帯を1824歳に変更したことにより増加している。 

費目別、世帯人員別標準生計費の推移(各年4月 単位:円)

 世帯人員

 1人

2人 

3人 

 平成21年  126,250(26.6) 159,060(▲12.6)  194,740(▲6.4) 
 食料費  30,680(21.6)  33,370(▲8.9)  44,790(▲5.3)
 住居関係費  34,610(31.4)  57,360(▲4.2)  52,370(0.2)
 被服・履物費  9,110(85.9)  5,810(▲17.0)  8,000(▲4.6)
 雑費Ⅰ  34,610(14.8)  41,260(▲17.7)  61,640(▲9.1)
 雑費Ⅱ  17,240(31.6)  21,260(▲24.6)  27,940(▲13.5)
 平成20年  99,730(1.5)  181,890(▲5.6)  208,090(▲1.7)
 平成19年  98,270(0.4)  192,780(13.5)  211,770(4.5)
 平成18年  97,900(▲24.5)  169,820(2.1)  202,660(0.6)

   (  )内は対前年比、▲はマイナス、単位は%

労 務 相 談 室

 

【病気欠勤で支給額増える?】・・・高年齢継続給付

 

<質 問 > 低下率に応じ支給率決定

    再雇用の嘱託社員が、病気で長期間休まざるを得ない状況です。高年齢雇用継続給付は、賃金が下がれば給付が増えると聞いています。年休消化後は欠勤で給料が大幅に減りますが、雇用継続給付の金額はどう変わるのでしょうか。

 

 <回 答>  欠勤控除分は補填なし

    高年齢雇用継続給付は、60歳到達時等賃金と支給対象月の賃金額を比較し、その低下率に応じて支給率が決まります。低下率が61%未満のときは15%で固定、61%以上75%未満のときは「15%から一定割合で逓減する率」です。「逓減する率」が適用される範囲内では、ご質問にあるように「賃金が下がれば給付が増える」という原則が当てはまります。

ただし、低下率を算定する際に、「疾病その他の理由で賃金を受けられなかったとき」は、実際に支払われた賃金ではなくて、「みなし賃金」を用いる規定となっています。みなし賃金を使うのは、次の場合です。

・非行(自己の責めに帰すべき理由、自己都合欠勤など)

・疾病・負傷

・事業所の休業

・その他、公共職業安定所長が定める理由(妊娠、出産、育児、介護など)

みなし賃金は、「支払いを受けることができなかった賃金がある場合には、支払いを受けたものとみなして」算定した賃金額です。お尋ねのケースでは、病気欠勤により賃金額が減っても、欠勤がなかったものとして扱います。ですから、欠勤前の「低下率」と、みなし賃金額を用いた「低下率」はほとんど変わらないはずです。

一方、雇用継続給付そのものは、「①支給対象月に支払われた賃金額×②低下率に応じた支給率」の算式に基づいて算出します。①の「支給対象月に支払われた賃金額」には、みなしルールは適用されません。病欠による控除等で賃金が大幅に下がれば、その金額を用いて雇用継続給付を算定します。

②の低下率は病欠前と後でほとんど変わらないので、雇用継続給付の金額は、欠勤控除額に比例して低下します。

1ヵ月間すべて欠勤して賃金が支払わなければ、雇用継続給付もゼロになります。この場合は、老齢厚生年金の一部支給停止が解除されます。

   < 労 務 相 談 室

 

【退職まで妻は「3号」か】

<質 問 > 年下で60歳未満

    定年後、厚生年金の被保険者として継続雇用している男性社員がいます。年下の奥さんがいるのですが、夫が雇用されている限り、妻は第3号被保険者になると考えてよいのでしょうか。

 

<回 答>  65歳に達し1号へ変更も

    国民年金の第3号被保険者とは、第2号被保険者の被扶養配偶者であって20歳以上60歳未満であるものをいいます。

注意しなければならないのは、厚生年金の被保険者イコール国民年金の第2号被保険者とは限らない点です。

国年法附則第3条では、「被保険者の資格の特例」について規定しています。国民年金の第2号被保険者について、「65歳以上の者にあっては、老齢年金または退職を支給事由とする年金の受給権を有しない被保険者等に限る」となってます。つまり、夫が働いていても、年金の加入期間が短く受給権がない場合を除き、65歳に達した段階で国民年金の第2号被保険者資格を失ってしまいます。 

 

 

【裁判員の災害補償は?】

<質 問 > 職務終え職場へ移動中

    裁判員制度が始まりましたが、自宅から裁判所へ向かう途中や裁判所から職場へ向かう途中で事故に遭った場合は、労災保険法の適用となるのでしょうか。

 

 <回 答>  公務に当たり国公災法適用

    裁判員および補充裁判員は、裁判所によって選任され、臨時に裁判という国の事務に従事するので、非常勤の裁判所職員、すなわち、非常勤の国家公務員として扱われます。

なお、裁判員等が裁判所と職場の間を移動する際に生じた災害については、「労災保険法の規定による補償の対象ではなく、裁判所による補償の対象となるものであることを念のため申し添えます」(平21.4.1事務連絡)としています。

裁判所側からみた場合、裁判員の公務を終えて職場へ向かうことは、「帰るべき場所」として、当然に予定されていることから、勤務先の労災保険でなく、自宅から裁判所への移動と同様に国家公務員災害補償法の適用を受けられます。

 【改正労基法で通達】・・・厚生労働省

60時間超と深夜で75%増し

    厚生労働省は、平成2241日に施行する改正労働基準法の詳細な運用基準を、都道府県労働局長宛てに通達した。

新たに法定割増率50%が適用される時間外労働は、賃金起算日から累計して60時間を超えた時間数で、深夜労働と重なると75%増しの支払いが必要となる。引き上げ分の割増賃金支払いに代えることができる代替休暇は、労働者の意思に基づき、時間単位年次有給休暇と組み合わせるなどして、一日または半日単位で付与しなければならないなどとした。

通達によると、50%増しの割増賃金支払いが必要となる時間外労働は、賃金起算日から1ヵ月間において、累計60時間を超えた時間数で、所定休日(週1回または44日の休日以外)に行った時間外も含めて計算する。深夜労働と重なった場合は、75%増しの割増賃金支払いが必要になるとした。引き上げ分の割増賃金支払いに代えて付与することができる代替休暇については、まとまった休暇として労働者の休息に当てる趣旨から、1日または半日単位で付与しなければならない。

代替休暇が計算上1日または半日に達しないときは、使用者が「任意に創設」した有給休暇と併せて、決められた単位で付与する。今回新たに認めた時間単位年次有給休暇と組み合わせることも可能とした。その場合に50%増しの割増賃金にかかわるのは、代替休暇部分に限られる。代替休暇を与えることができる期間は、時間外労働が60時間を超えた1ヵ月の末日の翌日から起算して2ヵ月以内としている。前々月の時間外労働に対応する代替休暇と同じく前月の代替休暇と合わせて1日または半日として付与することもできる。

ただし代替休暇は、個々の労働者に取得を義務付けるものではない。代替休暇に関する労使協定が締結されている事業場において実際に取得するか否かは、労働者の意思による。

時間単位年休では、1日分の年休が何時間分の時間単位年休に相当するかが問題となる。所定労働時間数を基に計算して定めるが、1時間に満たない端数時間が生じた場合は、労働者にとって不利益とならないよう時間単位に切り上げる。労使協定で定めれば、2時間、3時間単位で付与するのも可能とした。

時間単位年休も時季変更権の対象となるが、労働者が時間単位年休の取得を希望したにもかかわらず1日単位に変更したり、逆に1日単位で希望したのに時間単位に変更するのは時季変更権に当たらず認められない。  

【高齢者雇用の取組みと課題】・・・日本経団連 

60歳定年維持は4分の3

高齢者の雇用確保措置として継続雇用制度が圧倒的に多く、上限年齢も最終的な65歳を織り込み済み――日本経団連の「高齢者雇用の促進に向けた取組みと今後の課題」と題するレポートで明らかにした、独自のアンケート調査結果である。公的給付の受給を前提に制度設計している一方、60歳定年制は4分の3強が維持すべきとしている。

改正高年法が要請する雇用確保措置に対し、再雇用などの継続雇用制度で対応するところが98.4%と圧倒的多数を占め、定年の引上げまたは廃止はあわせても1.4%に過ぎなかった。

継続雇用制度を選択した理由としては、「個別の事情に応じて仕事を提供し、労働条件の決定ができる」が69.6%と最も多い。企業側の本音ではあるが、逆に従業員の考え方などへの配慮もみられ、「継続勤務を希望しない従業員の意思を尊重できる」56.5%、「健康上の不安など従業員の個別事情に対応しやすい」41.0%などとなっている。

改正高年法では雇用確保措置の上限年齢を、年金支給開始年齢にあわせて段階的に引き上げるよう求めているが、継続雇用制度の上限年齢を65歳にセットしている企業が68.2%を占め、多くの企業が対応措置として織り込み済みだ。

定年前と同じ勤務日数・勤務時間が81.7%と多数を占め、処遇決定時には63.7%が職務内容・仕事量を、41.6%が60歳までの賃金水準を考慮している(複数回答)。在職老齢年金、高年齢者雇用継続給付金を活用した設計が一般的で、両方の受給を前提とするところが48.3%に上り、前者のみが11.3%、後者のみが12.3%。「経済財政改革の基本方針2008」の新雇用戦略では、企業のトップマネジメントは4分の3強が60歳定年制を維持すべきとしている。  

【未払い賃金立替払い事業状況】

20年度は250億円へ

    深刻な景気悪化を受けて、労働者健康福祉機構が行っている未払い賃金立替払い事業の利用が増えている。平成20年度は前年度比14億円増の約250億円に上り、3年連続して増加した。とりわけ10月以降の下半期は上半期に対し26.9%増となっており、中小企業の倒産の拡大を窺わせる。

業種別では製造業、建設業、商業の3業種あわせて6割を超える状況だ。未払い賃金立替払い事業は、企業が倒産して賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、その未払い賃金の一定範囲を労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度。中小企業に働く労働者のセーフティーネットの性格を持つが、利用件数の増減は経済環境を反映するバロメーターともいえる。

下表で分かるように、立替払い額のピークは平成14年度の476.42億円で、以降漸減していたが、17年度を底に再び増加に転じ、20年度は前年度比6.0%増の248.21億円になった。伸び率では18年度の11.1%、19年度の14.6%に比べ減少したが、金額的にはピーク直前の13年度の水準に次いでいる。

企業数3639件のうち30人未満規模が84.9%を占め、30299人規模が14.6%である。支給者数では前年度比5.9%増加した30299人規模が25903人(47.6%)で、30人未満規模が22521人(41.4%)だった。

1人当たり立替払い額の平均は45.6万円で、30人未満規模が47.0万円、30299人規模が47.8万円、300人以上規模が31.0万円となっている。 

年度

(平成)

企業数(件)

支給者数(人)

立替払い額(百万円)

10年度

11年度

12年度

13年度

14年度

15年度

16年度

17年度

18年度

19年度

20年度

2,406

2,773

3,538

3,900

4,734

4,313

3,527

3,259

3,014

3,349

3,639

42,304

46,402

51,437

56,895

72,823

61,309

46,211

42,474

40,888

51,322

54,422

17,335

20,149

20,792

25,565

47,642

34,190

26,504

18,399

20,436

23,417

24,821

累計

57,429

885,375

362,038

【17助成金を実行】・・・厚労省 

正社員化で100万円支給

    厚生労働省は、拡充・創設した職業安定関連の合計17助成金などを、実行に移した。雇用調整助成金の要件緩和・助成率アップをはじめ、派遣労働者を正社員化した派遣先に100万円(中小企業)を支給する派遣労働者雇用安定化特別奨励金、採用内定を取り消された者や年長フリーターを正社員雇用した場合に同じく100万円を支給する若年者等正規雇用化特別奨励金などを創設している。

実行に移した助成金は下表のとおりである。雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金は、助成率・支給限度日数を引き上げたほか、制度利用後1年間は再利用できないとするクーリング期間、さらに休業が一定以上(中小企業20分の1、大企業15分の1)でないと助成対象としない規模要件をそれぞれ撤廃した。関心が高い派遣労働者雇用安定化特別奨励金は、派遣先が派遣労働者を期間の定めのない労働契約か、6ヵ月以上の期間の定めのある労働契約を締結して雇い入れたときに支給する。支給額は、期間の定めがない場合は1人につき中小企業100万円、大企業50万円、期間を定めると同じく50万円、25万円となる。なお支給時期は、雇入れ半年後や1年半後などに分割する。

若年者等正規雇用化特別奨励金では、採用内定を取り消された者と年長フリーター(2539歳)などを正規雇用した中小企業に1人当たり100万円、大企業に50万円を支給する。正規雇用半年後、1年半後など3年にわたって分割支給する。23年度までの時限措置としている。

解雇・雇止めした労働者に対して、離職後も継続して住居を提供又は住居費用を負担する企業に支給するのが離職者住居支援給付金。対象労働者1人当たり最大6ヵ月にわたり、住居の所在する都道府県に応じて月額4万〜6万円を助成。高年齢者雇用開発特別奨励金は、中小企業に対する助成額を大幅に引き上げた。公共職業安定所などを介して、65歳以上の求職者を1年以上継続雇用する労働者として雇い入れると、一般労働者で1人当たり90万円(従来60万円)、短時間労働者で60万円(同40万円)を支援する。

 《施行した職安関連助成金など》

①    雇用調整助成金の拡充 

②    中小企業緊急雇用安定助成金の拡充

③    離職者住居支援給付金の創設

④    特定就職困難者雇用開発助成金の拡充

⑤    緊急就職支援者雇用開発助成金の拡充

⑥    高年齢者雇用開発特別奨励金の拡充

⑦    若年者等正規雇用化特別奨励金の創設

⑧    介護未経験者確保等助成金の拡充

⑨    介護労働者設備等整備モデル奨励金の創設

⑩    派遣労働者雇用安定化特別奨励金の創設

⑪    育児・介護雇用安定等助成金の拡充

⑫    中小企業子育て支援助成金の拡充

⑬    障害者初回雇用奨励金の創設

⑭    特例子会社等設立促進助成金の創設

⑮    ふるさと雇用再生特別交付金の創設

⑯    住居を喪失した離職者等に対する資金の貸付け

⑰    訓練等支援給付金の拡充

労 務 相 談 室

 

【自己都合で給付制限か?】

 

<質 問 > 妊娠したため退職

    このたび、妊娠したため退職することにしました。しばらく再就職するつもりはないので、基本手当の受給期間を延長する予定です。子育てが一段落したら、求職活動を始めますが、この場合自己都合退職ですから、基本手当を受給するときは、3ヶ月間の給付制限が適用されるのでしょうか。 

 

 <回 答>  延長90日以上受ければ解除

    所定給付日数分の基本手当は受給期間内に限り支給されます。その期間は、原則1年間ですが、妊娠・出産・育児等によって、30日以上引き続き職業に就くことができなければ、延長できます(雇用保険法第20条)。

「妊娠」は産前6週間に限らず、本人が職業に就き得ない旨を申し出た場合であり、「出産」は原則として、出産予定日の6週間前の日以後、出産日の翌日から8週間を経過するまでの期間をいいます。

延長後、基本手当を受給するにあたり雇用保険法第33条では、正当な理由がなく自己都合で退職した場合は、3ヵ月以内の間で基本手当を受給しないと規定しています。

正当な理由とは、退職がやむを得ないものであることが客観的に認められることをいい、「妊娠、出産、育児等により退職し、受給期間延長措置を90日以上受けた場合」が含まれます。ですから、給付制限は行われません。

 

 

【協定超え残業命じた責任は?】

<質 問 > 締結義務負う派遣元か

    当社で派遣契約の打ち切りを決めたため、派遣元の人材会社が相当数を解雇したと聞きます。そのうち1人が、在職中に「36協定の限度を超える時間外を強制された」と当社に苦情を訴えています。36協定の締結義務は派遣元にあるので、法的な責任は当社に及ばないと考えますが、いかがでしょうか。

 

  <回 答>  順守すべき派遣先に罰則

    派遣労働者を雇用しているのは派遣元事業主(人材ビジネス会社)ですから、原則として、労基法上の責任を負うのは派遣元です。ただし、具体的な指揮命令は派遣先が行っているため、その範囲内で派遣先を「労働者を使用する事業主」とみなす特例が設けられています(派遣法第44条)。

ご指摘のとおり、「時間外・休日労働(36)協定の締結義務」は派遣元にあります。だからといって、派遣元が協定範囲を超えて時間外労働に従事させた責任を自動的に負うものではありません。

36協定締結の直接的効力は、時間外労働の刑事的免責です。協定の限度を超えて労働させた場合、免責を受けることができず、法定労働時間を定めた労基法第32条に違反します(労基法コンメンタール)。

派遣法の特例によれば、労基法第32条(法定労働時間の遵守)、第36条第1項(協定に基づく時間外労働)の規定は、派遣先の事業主に適用されます。派遣先の事業主は「派遣元の事業主が、派遣元事業場の過半数労組(ないときは過半数代表者)と協定し、労基署に届け出た場合、労基法第32条の規定にかかわらず、労働時間を延長できる」と読み替えます。法定労働時間順守の義務を負う派遣先が、自ら協定時間を超える時間外労働を命じたのですから、罰則は派遣先に適用されます。

ただし、派遣元は「派遣契約に従って労働させたなら労基法に抵触するときは、派遣を行ってはならない」(派遣法第44条第3項)ので、この規定に反するケースでは、派遣元も労基法違反で罰せられます(同第4項)。

いずれにせよ、時間外労働に対する割増賃金の支払義務は法の原則どおり派遣元が負います。仮に請求されても、貴社が応じる必要はありません。

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特定社会保険労務士 木阪 正規(埼玉県社会保険労務士会 所属)

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